温もりを抱きしめて【完】
「ところで、新(あらた)まだ来てないの?」


2人の園芸部員との顔合わせは済んだけど、そう言えば部員はあと1人いるはずだ。

それが夏希ちゃんが言う「アラタ」っていう人らしい。


「新先輩なら職員室で見かけましたよ?」

「アイツ…また何かやらかしたのか?」


一之瀬さんの言葉に、神谷くんの言葉。

どうやらこれは日常らしい。


「もう、今日は新入部員紹介するから遅れるなって言ったのに」


腰に手を当てて、怒った様子の夏希ちゃん。

すると、遠くの方から誰かの声が聞こえてきた。


「すいませ〜ん!」


声の方へみんなの視線が移ると、息を切らして走ってくる男の子がいた。



「新!おそ~い!」



夏希ちゃんの声にさらに走るスピードを速めた彼は、着くや否や膝に手をついてハァハァと言っている。



「すみません、遅くなっちゃって」



そう言って顔を上げた”アラタ”くんは、ツンツンした茶髪頭の男の子だった。

目はくっきり二重で、鼻も高くて、整った顔立ち。

園芸部とは無縁そうだけど…きっと女の子から人気なんだろうな、と感じるルックスの持ち主だ。


「で、何で遅れたの?」

「ちょ、ちょっと野暮用で~...」


と、へらっと笑う彼に夏希ちゃんからの鉄拳が落ちる。
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