控え目に甘く、想いは直線的
高鳴る鼓動を気付かれたくなく、小さく深呼吸する。


「おい、緊張するなよ? 緊張されるとこっちが恥ずかしくなる」


「何で緊張してると……」


「お前の緊張した顔は面接の時から見ていて変わらないから。分かりやすい」


緊張するなと言われて、落ち着いてきていた鼓動が再び高鳴った。

無理! もう緊張しないなんて無理だ。どうしよう。

そうだ、離せばいい。繋いだ手を離せば緊張もなくなるはず。


「離さないからな」


「ええっ! そんな……」


「俺は緊張してるお前が好きだからな」


「はい?」


ぎゅっと手に力が込められたけど、なんか聞き慣れない言葉を聞いたような気がした。


「ねえ、ちょっと! 今の聞いた?」

「うん。聞こえたよー。好きだからだってー。うわ、こんなとこでさらりと言っちゃうなんて、かっこいい! いいなー」


私よりも先にすれ違った女子高生二人が反応した。人に聞かれいたなんて恥ずかしいけど、今聞こえたことが空耳ではなかったことを証明してくれていた。
< 122 / 224 >

この作品をシェア

pagetop