雨も好き。
「夏海?」

この声は。

「え、瑛星?」

やばい。

「なんでいるんだ?誰と来た?」

後ろでは、瑛星の友達だろう、誰だよ〜と面白がっている。

ごめん、先行ってて。
そう言って瑛星は友達と離れた。

「ええっと、友達と来てて。今、お手洗い行こうと思ってたんだけど...ごめん、りんご飴ついちゃったね.....」

「ああ、これくらい洗えばとれるだろ。それより─」

明らかに不本意そうな顔。
そりゃそうだ。あたし、なんて言った?
嘘だということはバレているらしい。

無意識のうちに、あたしは後ずさりしていた。
瑛星が近い。

「....わかったよ、悪かった。」
そう言って離れていく。

わかったってなに?

「ま、まって!」
とっさに追いかけると、慣れない下駄でバランスを崩す。

やばい、転ぶ─
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