雨も好き。
「もー、そんなに上手いなら先に言ってよね!」

僕、言ったけどね?

「ごめんごめん。ねぇなっちゃん、これ。」

そう言って、なっちゃんにさっき買ったりんご飴を渡す。

「え?だってあたしが奢らなきゃ...」

「別に僕、りんご飴欲しかったわけじゃないし。」

じゃあ負けてくれても良かったのに、と少し膨れっ面。

「でもねー、そのかわり─」

そう言うと、なっちゃんが身構える。その代わりになるものとは。
君の中でりんご飴はどんだけ崇められてるの。
その様子が面白くて、少しじらしてみる。それから、

手を握った。

そして、指を絡める。

「帰るまで絶対離しちゃダメ。OK?」

こくこくと頷くなっちゃんの顔は、またりんご飴のようだった。
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