夜のひそやかな楽しみ (Spin off 追加しました)


    *


人気のない事務室では、廊下先の階段を下りていく足音まで聞こえる。


それも聞こえなくなると、碧は脱力して椅子に座りこんだ。


今のなんだった?


片手で口元を覆う。


したよね?


妄想?


見つめているのに気付いて顔を上げたら、深みのある瞳からそらせなくなった。


そうしたら光を帯びて、色が変わって・・・。


あの時、完全に捕捉された獲物になっていた。


美しいラインのくちびるが近づいくるのに、ただ見とれていて。


滑らかな肌。


通った鼻筋。


やっぱりギリシャの彫刻のようだと心奪われていたら、やわらかく重なった。
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