白衣の王子に迫られました。


――……もしかしたら、このままずっと処女かも知れない。

そんな危機に直面した三十歳の誕生日。

何が悲しくて、夜間の緊急オペなんかに呼び出されたんだろうか。

「まあいっか、どうせ祝ってくれる彼もいないし」

「おいこら、なにぶつくさ言ってんだ! しっかりそこ広げてろ」

「……はい、すみません」

穂高千嘉。都内の大学病院で働く外科医だ。

容姿はまあまあ。ちゃんと化粧をすれば結構いけるかもしれないとも思っているが、いつもノーメイクにメガネ、そしてただ束ねただけの黒髪……という絵にかいたような地味で目立たない女。

お堅い公務員の家庭に生まれた私は、修道院のような女子校に放り込まれ、恋を知らずに育った。

大学時代は勉学に明け暮れ、医者になったら超多忙。

はっと気付いた時にはやらずの三十路。“ヤラミソ”になってしまったのでした。

めでたし、めでたし。……んなの悲し過ぎるんですけど。

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