白衣の王子に迫られました。
肉食系ナース


「一睡もできなかった」

翌朝、私は昇り始めた太陽を恨めしく思った。

新聞配達のバイクの音が、近づいてきてまた、遠ざかっていく。

あんなことがあって、爆睡できるほど図太くはなく。かといって気に病んで仕事を休むほど繊細でもなかった。

「昨日の患者さんのことも気になるし、早めに家を出るか」

ベッドから這い出して熱めのシャワーを浴びた。濡れた髪のままで放置しておいたお弁当を開ける。

「悪くなってないかな……」

 医者が食中毒なんて笑えない。私は匂いを嗅いで確かめると、唐揚げをひとつ口に放り込んだ。

「うん、大丈夫」

 でも、食べ始めて少しして箸を置いた。

美味しいはずの弁当が砂をかんでいるように感じる。

ごくんと飲み込むと、冷たい塊が胃の中に落ちた。

(勿体ないけど、ごちそうさま)

ていねいに手を合わせて、ふたを閉めてレジ袋に戻す。

それから髪を乾かして歯磨きをすると、病院へ向かった。

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