君が笑ってくれるなら
10章/PRIDE
和泉の耳に詩乃の悲痛な叫び声が焼きついている。

結城に強く抱きしめられ、そっと触れた結城の唇の柔らかさが忘れられない。

結城は病室で倒れたことで入院が数日延長になり、サイン会で倒れて以来、10日も入院した。

退院後、出社した結城は鼻にカニュラを差し込んでいた。

社員たちは社内を闊歩する結城を物珍しげな視線で振り返り、声を潜める。

結城が気にする様子はない。

「結城さん、もう大丈夫なんですか?」

総務部に診断書を提出した結城に、和泉が心配げに訊ねる。


――ああ、大丈夫。見舞いに来てくれたのにすまなかった

和泉は結城さんはあの時、熱があったみたいだし、ずいぶん弱っていて、心細かったんだ、だから……あんなことをと、心の中で自分自身に言い聞かせる。

――色々と不便だが前より体は楽だ




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