君が笑ってくれるなら
16章/長い1日
1月中旬。

「結城くん、いよいよ明日だな。那由多賞選考会」

──そうですね。先生の作品と並んで候補になど恐れ多いですが

梅川百冬のお宅で、原稿をパソコンに打ち込んでいく。

同行した加納が梅川先生の原稿を眺め、眉間に皺を寄せている。

「『空と君との間には』は連載当初から注目されていた。那由多賞候補にあがって当然だと思った」

──先生の臨場感溢れる作品には及びません。「銀座シャーク」は原稿を打ち込みながら、ワクワクしました

「しかし、鮮やかだな。俺の汚文字が瞬く間に活字になっていく。君が打ち込んでいるのを観ているとパソコンも簡単そうだが……なあ、加納くん」

「はあ。結城さんの仕事ぶりには毎日、溜め息しかでません」

「大丈夫かね、結城くんは今月いっぱいまでだろ」

「不安でたまりません」

加納が口をへの字にし、頼りない声を出す。
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