君が笑ってくれるなら
17章/君が笑ってくれるなら
那由多賞受賞会見は何を聞かれ、どう答えたのか殆ど覚えていない。

会見会場につくなり、黒田さんが手話通訳を買って出てくれた。

掠れて嗄れ空気漏れする声を晒さなくていいことに安堵した。

会見の後は詩乃のしきりで、俺のマンションはドンチャン騒ぎと化した。

黒田さん、相田さん、編集長など編集部のメンバーや西村先生、梅川先生、沢山江梨子も豪遊し、ワイン、焼酎、日本酒と詩乃の手料理で、ゆっくりする間もなかった。

声が出るようになったことを彼らは手放しで喜んでくれた。

暫く使わなかった喉を労り、詩乃は喉飴や蜂蜜を用意したが、気休め程度に過ぎない。

「結城くんはイケる口だろ」と、次から次に酒を勧められた。

執筆中の作品と次回作のこと、コンツェルンのことにも話が及んだ。

さらには誰もが紗世から贈られた花束をみつめ、紗世を偲んだ。
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