君が笑ってくれるなら
「出来ました、課長」

17時45分。
嬉しそうに書類を差し出した加納。


俺は書類を受け取って、目を通す。


――ありがとう。お疲れ様。部長に提出して。データ保存は忘れずに


「はい」

加納が編集長に書類を渡して、席に着いたのを確認し、編集長が俺に手話を送ってくる。


……由樹、自分で書類を作った方が早かっただろうに


……仕事を覚えてもらうのも仕事の内ですから


俺は苦笑いしながら、手話を返す。


……戦力が増えるのは助かるよ

俺は打ち出した梅川百冬の原稿を、編集長に提出し、その他の書類を仕上げてパソコンを閉じる。


18時きっかり。
加納が「お疲れ様でした」バタバタと室を出ていく。

彼女とデートでもあるのかというくらいウキウキした様子で。


アフター6か……。
彼女が居なくなって、そんな楽しみもなくなったな。

ふと思う。
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