Hospital waste
シールの通りに両方押すアレックス。

ブツッ!

短いノイズに続いて、室内音だろう、サーッというノイズの音。

ややあって。

『はい?』

女性の声がした。

まるでロボットの合成音声のような、抑揚のない声。

「お話を聞きたくて来たんですが」

努めて丁寧に、アレックスは言う。

彼の声に、無表情な声は答えた。

『患者の方ですか?』

「いえ、取材希望です」

すると、女の声は言った。

『一見さんは入れる事が出来ません』

一見さんとは何だ、患者に一見さんもないだろう。

怪訝な表情をしていると、女が続ける。

『この病院のホームページは見ましたか?』

ホームページなんて、そんなものがあったのか。

知らなかったが、適当に見たと答えると。

『ホームページに連絡先が掲載されています。そこから連絡して下さい』

ブツッ!

短いノイズだけを残して、通話は一方的に切られた。

まだ話の途中だというのに。

取り付く島もない。

< 12 / 200 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop