油断は大得?!

戒心

美波にはこの事は言わないでおこう。言ったところで不安を掻き立てるだけだ。
言わなくても、一之瀬は遠慮無く行動に出るだろう。
現実として感じる事になるはずだ。

何がきっかけだとしても人を好きになることはある。だけど、こんな形で……暇潰しのゲームのつもりか？真剣な気持ちはあるのか？…遊びなら人の関係性を揺るがせるだけ…許せない…。

まだ一之瀬という男、どんな男なのか掴めない。
中身はどうであれ、美波を頂くと宣戦布告して来た、油断大敵だ。
丁寧な言葉遣いは、仕事上だけのモノのようだし。

ああ言い返したが、美波は決して難攻不落なやつでは無い。
どちらかと言えば…はぁ、…隙だらけでフラフラしてるところがある…。
だが、そうでも言っておかないと…。易々と奪われる訳にはいかないからな…。

こう言う事に、つき合いの長さなど無意味だ。
どんなに長くつき合っていようと、気持ちが無くなれば終わりだ。

美波はどうなんだ…。

一之瀬との出会いをおちゃらけて話してはいたものの、ドキドキしたことは間違いなさそうだった。その瞬間はちょっとときめいたってことだからな……。

これ以上不安になる前に、美波に会っておかないと…。何より、俺が…。
情けない。

遅い時間だが、美波に連絡も入れず、俺はいきなり部屋を訪れる事にした。