心の中を開く鍵
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数日後の高野商材とのミーティング。

今日のメンバーは羽賀部長。それからうちの企画室の社員数名と、営業部の数人。
高野商材側は珍しく砂川営業部長と翔梧とその他2名。

お茶を出したところで、飛び入り参加の相談役顧問。

目が点になったのは、羽賀部長だけじゃない。

さすがの唐沢さんも目を見開いて、大慌てでタブレットを取り出すと、顧問のスケジュールを確認してる。

確認するまでもなく、この時間、相談役顧問は社長と四国工場の視察に行っている時間なんだろうけど。

「あんのタヌキ親父……」

小さくなされた彼女の暴言は聞き流す事にして、何が起こったかわかっていない高野商材側は、ただ顧問は遅れて入って来ただけと判断したみたい。

「構わん。続けなさい」

そう言って、末席に座った顧問に砂川さんと翔梧が眉を上げた。

あのふたりは顧問が“予定外”の珍客だと気づいたらしい。

「私、顧問の分のお茶を用意してきます」

こっそり唐沢さんに耳打ちしたら、唐沢さんも諦めて頷いた。

「ついでに、葛西くん呼んできて。顧問にガツンと言えるの彼だけだから」

ガツンと言っている主任は見たことないけど、確かに顧問に意見を言える人は限られるのかもしれない。

それを言ったら、唐沢さんだって言えそうな気もするんだけどなー。

とりあえず、秘書課に寄って葛西主任に事情を話し、社長秘書に連絡をつけると顧問の出張はキャンセルにしてもらった。

それからお茶を用意して、会議室に戻る。

直接関わったわけじゃないけど、プロジェクトも大詰めだ。
何て言うか、携わった感想としては……どこか満足と言うか。

まぁ、企画室と営業部は、まだまだ携わって行くんだろうけどね。

ミーティングも終わりの頃、滑るように静かに主任が姿を表せる。
それを見つけて、顧問がちょっぴり嫌な顔をして、唐沢さんを見た。

「では、特に問題はないようでしたら……」

眼鏡をかけながら、真面目な顔で話を締めくくる翔梧に気がついて、顧問が片手を上げる。

「あー。質問じゃ」

「なんでしょうか?」

見事なまでに営業スマイルの翔梧に、顧問も愛嬌たっぷりに首を傾げた。

「うちの山根と、いつ結婚するつもりでいるのかね?」
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