心の中を開く鍵
「……すみませんでした」

とりあえず謝ると、葛西主任は片手を振って溜め息をつく。

「いつか何か、やらかすだろうとは思っていましたから」

「まぁねぇ。だからって、何も今日みたいな大詰めの日に来なくてもいいのにと思うわよ?」

唐沢さんが笑いながら言うと、主任はネクタイを閉め直して咳払いした。

「僕も頑張りましたから。それに、顧問は今日は直接駅に向かうはずでしたし……社内を見落としていました」

「え。主任が顧問を……?」

思わず私が呟くと、ちらりと見られて顔を赤らめる。

「押さえておけとお願いされましたでしょう? 僕が、と言うよりは、うちの妻がいいストッパーなんです。叔父は新しい姪に弱いらしい」

「あ。メモっておこう。手に終えない時は助けてもらっちゃおっと」

唐沢さんが真面目にメモを取り始めて思わず笑ってしまう。

そうして笑っていたら、葛西主任と目が合って、思わず姿勢を正す。

「……どうやら、落ち着くところに落ち着いたみたいですね?」

改めて言われると、とっても恥ずかしいんですけど。

照れていたら、唐沢さんにバシバシ叩かれまくった。

「ちょっと~。教えなさいよね! うまくいったんなら報告は義務よ!」

「いたっ! ぎ、義務なわけがないですからっ」

「義務よ義務! お姉様には聞く権利があるのよ!」

「そんなの横暴ですからー!」

そんな痛い祝福を受けながら、仕事を終えて、社員入口を出ると……。

眼鏡をかけたままの翔梧が、不機嫌に待っていた。
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