その手が暖かくて、優しくて
亜里沙、走る
「亜里沙!これ!お願い!」
背後から追ってきた数人の男たちに捕まり、後ろから羽交い締めになりかかっている瑞希から、亜里沙は手提げバッグを受け取った。

それは、ずしりと重かった。
これが綾小路を倒す最終兵器となる。今の時刻は17:30。すでに学校裁判は始まっている。そこに早くこれを届けなければ…

それを大事そうに胸の辺りに抱えて、亜里沙は駆け出した。彼女の行く手を阻もうとする者たちを佐藤たち龍神会が抑える。

そんななか、彼女はひたすら走った。

やがて金田の家から3kmくらい離れたところまで亜里沙は逃げて来たが、そのとき、彼女の正面から100人位いるんじゃないかと思えるほどの大勢の敵が迫って来た。

「やだ!捕まっちゃう!」
息を切らしながら、亜里沙は一旦、足を止めたが彼女の背後からも龍神会によって止め切れなかった追っ手が迫って来ていた。

「どうしょー!」彼女がそう思ったとき、彼女の前に勝弥が現れた。

「真鍋君!」

勝弥は亜里沙を守りながら、前から来た10人くらいの敵を倒しながら、
「このまま、突破するぞ!俺についてこい!」
亜里沙に向かって叫んだ。

しかし、この日、絶対に亜里沙たちの動きを封じなくてはいけないと考えた華麻呂は普段の倍の人数の私設軍隊を動員していた。

いくら勝弥といえ、何十人も倒しているうちに疲れてくる。
「くそ、きりがねぇ!」

すでに肩で息をしている真鍋の背後から鉄パイプを持った男が迫っていた。

「真鍋君!後ろ!」

亜里沙の声に反応した勝弥は、その攻撃を避けて、その男も倒したが、そのため一瞬、亜里沙と離れてしまった隙をついて、一人が亜里沙に掴みかかってきた。

「きゃあ!」

「亜里沙!」勝弥は亜里沙のもとに行こうとしたが、次々に襲ってくる相手を倒しているうちに、さらに亜里沙との距離が離れてしまった。



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