イジワル同居人は御曹司!?
まさか、朝っぱらからあんな刺激の強いもん見せられるとはな。

「ぎゃあ!」

今朝の光景がフラッシュバックし思わず短い悲鳴を上げた。

打ち消すようにブンブンと頭を横に振る。

挙動不審な私を道行く人達は怪訝な表情で振り返る。

完全な変質者だ。


よろよろした足取りでようやく勤務先であるP&C本社ビルへと辿り着いた。

我が社はヒューマンヘルスケア商品や化粧品などを取り扱う国内有数のメーカーである。

日用雑貨ではない。ヒューマンヘルスケア商品だ。

だってその方がスマートでしょ?

現在私は顧客の潜在ニーズ探り販売戦略を立てるデータマーケティング部に所属している。

なあんて聞こえはいいけど、言われたデータを社内システムから抽出して加工する雑用係りみたいなもんだ。

日々データと格闘し、華々しさとは程遠い地味な部署である。

「おはよー」

隣のデスクに座る後輩のゆうぽんに挨拶する。

「おはよーございまぁす」

ゆうぽんは欠伸を噛み殺し、気だるそうに挨拶をする。

今日のゆうぽんはガッツリミニスカートを履いてスラリと長い脚線美を惜しみなく披露している。

豹柄のジェルネイルを施したほっそり長い指で、金色に近い茶髪のロングヘアをかきあげた。

ゆうぽんはギャルファッションをこよなく愛する25歳だ。

「眠そうね」

「新しい部品を買ったんでサーバーいじってたら寝るのが3時になっちゃいましたー」

だけど中身はゴリゴリの理系女子である。

そっかー、といって私はにっこり笑って交わす。
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