イジワル同居人は御曹司!?
「もうあいつとは関わらないようにする!で、とっとと部屋を借りて家を出る!」

そうしなー、と言ってもっともらしく頷くと歩は私が淹れた緑茶を立ちながら一口飲む。

「歩は旅行どうだった?」

私の愚痴ばかり聞かせる訳にいかないので、歩に話題を振ってみる。

「良かったよ」歩はニンマリ笑う。

「個室にお風呂も付いてて、そりゃあ、いたせりつくせりでお肌もツルツル」

歩はウフフと妖艶な笑みを浮かべる。

どうやらしっぽり過ごして来たようだ。

桜井には残念だけど、起死回生のチャンスはなさそう。

「沙英も彼が出来たら一緒に行ってみるといいわ。紹介するから」

「い、いつになる事やら…」

私は力なくへへっと笑った。


歩は一旦、秘書室に戻ると言うのでエレベーターホールまでお見送りする。

タイミング良く一人の男性がエレベーターから降りてきた。

此方を振り向き視線が合う。

「どうも、こんにちは、藤田さん」

メガネの部下である小泉青年だった。

「ご連絡いただいた覚書の件で書類をお持ちしました」

小泉青年は爽やかな笑顔を浮かべる。
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