淋しがりやの心が泣いた
 私がここに来る時は、たいていなにかあってむしゃくしゃしていることが多い。
 今日は……失恋とまではいかないものの、恋愛がらみだ。

 仕事関係で知り合った人で、ちょっといいなぁと思い始めていた人がいた。
 けっこう年上だったけれど話は面白いし、私と同じ世代の男性より収入がいいから、デートで選ぶお店も高級で大人な感じだった。
 これから落ち着いた大人の恋が始まるのかな……。
 なんて舞い上がりそうになった自分に、今となっては説教をしたいくらい。

 そういう男性は往々にしてモテるし、調子に乗ってあちこち手を出す人もいる。
 要するに、アプローチをされていたのは私だけじゃなかったのだ。
 ほかに何人もの女性の影があり、私を含め、ちょいちょいつまみ食いを試みようとしていた最低男だったということが発覚した。………サイアク。
 今の段階で本性がわかったのは不幸中の幸いだとポジティブに考えるしかないのだけれど。

「まだ食べれそうだね。キーマカレーのトースト焼いてあげようか?」

「もちろん哀れな女にはサービスですよね?」

「もちろん。かわいい南ちゃんだからね」

 マスター、顔が若干引きつってます。
 酔っててもそこは見逃さない自分が恨めしい。

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