鉢植右から3番目


 確かに小学校から高校まで同じ学校ではあったけど、大して接点もなかったから存在を知っているって程度なのに。

 同じクラスになったことすらないんだぞ。

 興奮した母親二人は、子供たちは喜ばないかもしれない、などとは露ほどにも考えなかったらしい。

 というか、子供達には自分の意見を言う資格などないと思ったんだろう。絶対にそうだ。

 二人の母親は、約束をした。

 あなたの娘(息子)さんを頂戴ねって。

 そして非常に馬鹿らしいが、指きりげんまんをして、深夜、超ご機嫌で帰宅した。

 居酒屋からのバイト帰りの私の前に笑顔のままで仁王立ちになり、宣言したのだ。

「都、明日、あなたの夫になる人に会いにいくわよ」

 って。

「お母さん、針千本なんて飲めないから、言い訳や拒否は一切受け付けないわ。あんたは、私のお友達の、漆原さんの所の息子さんと、結婚しなさい」

 って!!!

 私は仕事から帰ったばかりで、台所に突っ立ってお茶を飲んでいるところだったのだ。その格好で固まったまま、開きっ放しだった口を何とか一度閉じてから言った。

 お茶を吹き出さなかった自分を褒めてやりたい。

「・・・・あの、お母さん?」

 母親は機嫌がいいままベラベラと喋る。目の前で化石化している娘は完全に無視していた。


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