鉢植右から3番目
そんなわけで初めてヤツの実家へいくことになった。電車で揺られて地元へ戻る。
座っててよ、と言われたけど今日一日嫁仕事をして今更完全放棄も出来ず、一緒に並んで立って台所を手伝った。
話も弾み、賑やかに笑いながら包丁を握る。
「女の子とこうするの、夢だったのよ~」
と本当に嬉しそうに言われてしまい、思わず包丁で指をぶった切りそうになってしまった。
―――――――――うう・・・。何か今、ものすごーい罪悪感が・・・・。すみません・・・まともな結婚じゃなくて・・・。
30秒はたっぷりと固まって、切っている最中だったピーマンの匂いが左手にうつってしまった。
何とかあははは~と軽やかに笑って私は言う。
「ピーマンの匂いって結構ありますよねえ~」
冴子母ちゃんはにっこりと笑って、そうね、と返し、私の手元を見て言った。
「あ、都ちゃん、もう少しだけ小さく切ってくれる?大人になってもまだ大地ったらピーマンが嫌いなのよ」
「え?そうなんですか?」
私は驚いてパッと横を振り返る。彼女は手を動かしながら笑って続ける。
「そうよお。どんなに細かくしても見つけて避けてたわ、子供の頃は。さすがに今はそんな事ないけど、それでもあまりに大きいと残すわねえ」
・・・へえ。そんな人間らしい一面があったとは驚きだ。
礼儀は正しいが、ヤツは無言で淡々と食べる。不味いとは言わないが、美味しいとも別に言わない。最初と最後に挨拶をして自分で食器は片付けている。