鉢植右から3番目


 ヤツはいつも通りのペースでご飯を食べながら、目だけをあげて私を見た。

 驚いてる、んだろうなあ、この顔は。

「・・・昼過ぎ?何時間やってたんだ?」

 どうせ賢いんだろ、その頭で計算してくれ。私は唇を尖らせて、ついでに声も尖らせて言った。

「人間得意不得意があるでしょ?私はこっち方面の才能がゼロなのよ、きっと」

 ひょいと肩をすくめた。呆れたというよりは、どうでもいいとか思っているに違いない。

「説明書もなしでよく出来るね」

 もう一度言うと、飲んだお茶のコップを置いてヤツが言った。

「組み立ての基本的な事は棚だろうが家だろうが変わらない。知っているなら見たら判る」

 家と棚を一緒にするか。付録のおもちゃの手帳も組み立てられなかった私とは住む世界が違うぜ。

「・・・知ってるの?」

「俺の仕事だ」

 ええ?マジで?私は完全にお箸を置いて、夫となって2ヶ月目の男性をガン見した。

「仕事?・・・あのー、つかぬ事を伺いますが、あなたは一体何の職業に就いてらっしゃるんですか?」

 お給料を頂いている割には知らないままだった私だ。

 ヤツの稼いでくる金額は毎月ほぼ安定しているから、業績給や歩合なんかでなく、一定の金額なんだろうと思っていたくらいで。

「什器を運び入れたり設置したり。たまに組み立てたり。営業や販売は部署が違うからしてない。力仕事の方が面倒臭くない」

 ・・・はあ、さようですか。やっぱりそこでも面倒臭くないかどうかが決めてとなったわけね。


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