鉢植右から3番目


「だって、これでやっちゃえばちゃんと恋人に・・・いや違うか、夫と妻になるわけでしょ?してないから法律上の夫婦ってだけで。しちゃえば普通のお見合いと変わらないじゃない!子供が生まれて、ちょっとずつ家族になっていくのはどこでも一緒なんだから~」

 そりゃまあそうだけど!いや、でも、何か間違ってないか!?

 もしもし?と私が呆れると、彼女は一人で頷いて言った。

「ほんと、そうなれば何も問題はないわよね。目出度く夫婦になって、その内いくらなんでも漆原だって愛情が湧くだろうし、恋愛に興味のない男なら浮気の心配もない。いいダンナになるかもね~」

 ・・・・確かに、浮気の心配はないだろうよ。あれだけの面倒臭がりが。

 奈緒は一人で興奮し、もしかしたらヤツは女を抱いたこともないかもよ~!童貞だったら教えてね、それがネタで半年は笑える、とはしゃぎ、そのえぐい言葉を吐いた同じ唇で美形の岡崎店長にコーヒーのお代わりをお願いしていた。

 何て女だ。イケメンが汚れる。

 まさか、初めてなんてことはねえだろ、と私は心の中で突っ込んだ。スカトロ野郎の話をした時だって面白そうな顔はしたけどそれだけだったし、「その点俺は普通だと思う」とかぬかしたんだから、経験は少ないかもしれないがあるはずだ。

 ・・・・・・・ヤツを・・・・・襲う・・・だと?

 32歳実際は独身の私の頭の中を妄想がぐるんぐるんと回る。

 やばい、変な女になってきた。最近ではホルモンも落ち着いて、生活も順調だし金の心配はないしで気楽に過ごしていて、同じ家に男がいるというのに性欲も沸かなかった私なんですが・・・宜しいんでしょうか、神様。

 二人の母親に迷惑な啓示を与えたんならついでにヤツと私にも性欲を与えてくれ。そしてひっついちゃえば、確かに普通の夫婦にはなる。

 どーしてそこに思い当たらなかったんだ、私!と突っ込んだけど、答えはさっき自分で言ったでしょうが、と後から突っ込みなおす。


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