鉢植右から3番目


 全く表情をかえずに、相変わらずだらだらとヤツが言った。

「・・・別に、どうも」

 で、なくてよ!

 想像世界で空手チョップをお見舞いした。実際にもやりたかったが、残念なことに二人の間には食卓があって邪魔だった。

 もっと直接的に、子供でなく、子作りについてと発言するべきだった!私は深く反省する。

「いや、そうじゃなくて。自分の子供が欲しいと思ったことがあるかってことよ!」

 指でぽりぽりと頬をかいて、首を傾げたヤツは答える。

「考えたことがない」

 ―――――――何でなのよ~!!おめえ、偽装とは言え結婚してるんだろうがよ!!誰にも突っ込まれたことなかったのか!?いや、そんなはずはない!!

 更にイライラとして、それを落ち着かせるために深呼吸をしてみた。・・・が、あまり効果はなかった。過呼吸になるのは抑えられたかもしれないけど。

 部屋に飛び込んで沈静作用のラベンダーのお香でも焚きたいが、今を逃すとこの話題には二度と持っていけそうにない。

 頑張るのだ、都!と自分に叱咤激励した。

 きっとヤツを見据えて、私は言う。

「―――――私は、欲しいのよ。出来たら35歳までに産みたいわ」

 ヤツは頷いた。簡単に、軽やかに。

「好きにしたら」


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