…だから、キミを追いかけて
「波留!もっとちゃんと拭いてよ!」

澄良が立ち上がって走り寄った。
肩にかけてあるタオルを奪い取り、ゴシゴシと背中を擦る。

「やめろ!」と波留が身を捩る。
その顔がなんとも言えず、照れくさそうに見えた。


気のせい?……ううん、間違いない……。


(……もしかして)…という思いが過ぎった。


直感。

きっと、そういう言葉がピッタリする。







「……好きなん?」

夕方、澄良の家を出てから聞いた。
前を歩く波留の背中に向かって、思いきって問いかけた。


「澄良のこと、好きなん?友達の…海斗さんの妻なのに……」


言ってはいけない一言だった…と自覚している。
でも、何処か苛めたかった。
自分と同じ様に波留を陥れたい気がしていた……。




「ーー誰が誰を好きだって⁉︎ 」

振り向いた目が怒っていた。当然だ。私はバカな事を口にしたんだから。


「……気のせいなら気のせいやって言って。凄んで誤魔化すようなことせんとって…」

睨み返す。
モテてたなんて澄良の気のせい。
皆、私の外見しか見てなかっただけだ。



「お前の『気のせい』!気ー済んだか!」

怒られる。怒る…って事は、図星だって意味だ。


「……済んだ。ごめん。それから……昨日も今日も……ありがと…」


俯いて立ち去る。

目から零れ落ちる涙。


何故だろう。

こんなにも後悔しているのはーーーー。




< 70 / 225 >

この作品をシェア

pagetop