ホワイトデーの奇跡【完】
「終わった…数学、怖いくらい出来たんだけど」
『本当っ? 良かったぁ…』
たまちゃんの家に泊まった日。
私はたまちゃんが部屋に戻ってくる前に
勝手にお布団を敷いてそのまま寝たふりをした。
我慢することなく泣いたから…
泣いたことを隠せる顔じゃなかった。
だから、あの夜のことはたまちゃんは何も知らない。
「蒼井、数学の最後って答え何になった」
後ろの席から武藤くんが声をかけてきた。
『えっと…最後は、Bになったよ』
「良かった、同じ」
『えっ、本当? 良かったぁ…』
良かったは私のセリフ。
だって、武藤くんなんて毎回学年トップ5に必ず入ってる人だから。
ただでさえ目立つ人なのに
かっこいいのに頭もいいなんてわかったときは…余計近寄りがたかったのに。
今は、こうして普通に話せるようになるなんて
入学したときは1ミリも思わなかった。