ホワイトデーの奇跡【完】



心の準備は1週間もかかったけど。

行動に移すまでの3年に思えば、短いものだと思う。




『…お母さん』




「うん?」




『私、ちょっと出かけてくるね』




「…えっ、出かけるって誰と?」



たまちゃんがバイト漬けなのをお母さんも知ってるから、不思議そうに私を見ていた。







『一人で、だよ』




そう言った自分にドキドキした。

告白でもするような、気分だった。




気づいたのはいつだろう…。

私が学校以外で外出するとき

お母さんが“どこに?”ではなく

“誰と?”と、聞くようになった。



お母さんにとって大切なのは

行き先ではなく、私が一人じゃないこと。



それに気づいたとき、とても心が痛かった。





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