「先生、それは愛だと思います。」完
「あ、もしもしユイコ?」
電話に出ると、焦った様子のユイコの声が聞こえてきた。
「ごめん文ちゃん! 家に帰ったら弟が熱出して寝込んでてさ! 青葉学園行けそうにないや」
「えっ、そうだったの、仁君大丈夫!?」
「うん、今から病院連れてく! 私から誘っといて本当ごめんね、また今度行こうっ」
気にしないで、と伝えて電話を切った。仁君大丈夫かな、心配だ……。
じゃあ、私は今ここで待っている理由はもうないわけで、じろじろと視線を浴びせられる理由もないわけで……。
私の高校の制服は、白のセーラー服に水色のチェックスカート、というなんともメルヘンな制服なので、余計にこの紺色だらけの校門では目立つ。私はすぐに帰ろうと、スマホをカバンにしまって校門を離れた。
「誰かに用事あんの?」
しかし、帰ろうとしたところを、見知らぬ男子生徒に呼び止められた。
彼の周りには二人ほど友人がいて、その二人も物珍しそうに私を見ている。
「呼んできてあげよっか?」
「あ、いえ、大丈夫です。また今度にしますので」
「東海林高校の子だよね? その制服本当かわいいよね」
「あ、ありがとうございます……」
腕を掴まれて、私は少し戸惑った。
制服のことで絡まれることは今まで結構あったけれど、まさか腕まで掴まれるとは。
私はなんとか切り抜けようと、ぎこちない笑みを浮かべる。