「先生、それは愛だと思います。」完
それから・・・

それは愛だと思います


春になって、私は希望より1ランク上の国立大学へと進学した。
受験期間は、母が入院したり、祥太郎君のきょうだいに突撃されたり、心美ちゃんに泣かれたり、思い返すと胃もたれしてしまいそうなほどたくさんの事件があった。

それでも私は今こうして無事に大学生となり、四年間はあっという間に過ぎ、就職活動も乗り越えることができた。
私が『学生』と呼ばれるのも、あと数週間だ。
そう思うと、やっぱりすごく寂しいし、社会人になる不安が募るばかりだ。

一体自分は社会に出れるほど、ちゃんとした人間なのだろうか。毎日そのことが不安で、気持ちが暗くなってくる。

「ことり、食券買ってきたぞ」
「ありがとう、祥太郎君っ」
「この時期に学食混むって、四年になってもどんだけ真面目に授業通ってんだよ」
「まだ必修科目がある人とかいるからねー」
「ギリギリ過ぎるだろ」

祥太郎君は、就職先に書類の提出があったらしく、スーツ姿のまま学校に来ていた。
祥太郎君は都内の有名な私立大学に受かっていたのだが、途中で教師になりたいという夢ができたらしく、教職に力を入れているこの大学へと編入してきた(尊敬する教授がこの大学にいることも大きな理由の1つだったらしい)。
まさか同じ大学に通うことになるとは思ってもみなかったので、編入するという連絡をもらった時はとても驚いた。

「祥太郎君、教採受かったんだね、おめでとう!」
「今更だな。でも、ありがとう。本当はもう少し留学とか経験して、教育について自分の足で動いて経験して学びたかったけどなー」
「立派なこと言うようになったねぇ……昔はとんがりまくってたのに……」
「なんだとこら」

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