麗しき星の花
「なるほど、分かりました。擦り切るのですね!」

 琴音は目を輝かせて頷いた。

 それからはちみつを入れ、バターを溶かし入れ、何かを入れるたびにシンとリィの突っ込みが入り、それを玲音がにこにこと見守る時間が過ぎていった。

 そして粉っけがなくなるまで混ぜ合わせ、生地をプレーン味にするものと紅茶の葉を入れるものにわけたところで。

「ここで隠し味を入れますね」

 紅茶の葉を入れながら琴音の目が煌く。

「隠し味……?」

 シンとリィが首を傾げている間に、琴音は小瓶を取り出した。

「少しぴりりとした刺激も必要ですし、彩も綺麗になります、きっと」

「あ、琴音ちゃん……」

 異変に気付いた玲音が止めようとしたときにはすでに遅く。

 甘い香りのする白い生地の中に、真っ赤な一味唐辛子がぶっ込まれた。例によって「これくらい」という大雑把な目分量で、小瓶丸ごと。

「こ、琴音! 馬鹿!」

「琴音……これは、レシピには、載ってない……」

 シンとリィが青い顔で琴音を見る。

「え、でも、あの、お料理はその人の個性が大事だと……それに、色々試してみて、おいしい味を追求していかなくてはなりません」

「そういうことは基本が出来てからやるんだ! お前、これ、食べられるのか!?」

「え、えっと……私は、辛いのが苦手でして……」

「なら何故入れた!」

 シン、怒り心頭に発する。食べ物を粗末にする者は許しません。

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