過保護な彼にひとり占めされています。



「……先戻る。荷物は俺が持って行くから」



耳元でささやく低い声に、ぞくっと反応してしまう。そんな私からそっと顔を離すと、相葉は足元に置かれていたケースを持ち、来た方向へと歩き出そうとする。



唇が離れても、その目が逸らされても、まだドキドキしてる。

その唇に、目に、鼓動が強く鳴る。



だって、信じられるわけがない。そんな一心に私を、なんて。

でも、だけど。



「……相葉、」



小さく呼んだ名前。止められた足に、私はトランクから地面へ立つとその大きな背中にそっと寄り添う。



まだ、信じ難い。

私じゃなくても、他の人でもいいんじゃないかとか、からかわれてるんじゃないかとか、思ってしまう。

だけど、その想いが本物であってほしいと願う自分がいる。



「……気持ち、疑ってごめん」



つぶやいた言葉に、相葉は荷物を手にしたままこちらを振り向き私の額へそっとキスをする。

そして小さく笑うと、そのまま駐車場をあとにした。



……額にしるした、小さなくちづけ。その感触に、ドキ、と胸がときめく音が聞こえた。

この前の1度目のキスと、今日の2度目のキス。確実に違うのは、それを受け止めるこの心だ。




それからすぐ仕事に戻った私は、相変わらず相葉とは目が合わせられないまま。

だけど目を逸らす理由は、気まずさやそういったものではない。



……恥ずか、しい。

目が合うだけで、また心はドキドキと音を立てるんだ。





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