いつか晴れた日に

「どうしたのよ?」

小会議室に入ってきたわたしを見るなり、先にお弁当を広げていた亜紀が声を上げた。

「……うん。部屋の鍵を付け替えることにしたら、予想通りまあまあの金額で。それで、来週あたりに買いに行こうと思っていたバッグを断念したところ」

ああ、と亜紀は短い相槌を打った。


「そっか、仕方ないよね。やっぱり鍵変えないと夜もゆっくり眠れないし。じゃ、落ち込んでいる怜奈にウィンナーあげる」

「ありがと」

わたしのお弁当の蓋に、それをひょいと乗せる亜紀は、実家暮らし。

こんな時、実家暮らしを羨ましく思う。だって、多少の食費を家に入れたとしても、家賃と光熱費はタダなワケで。

それだけでも、自由になるお金は随分と違ってくるのだ。


「で、あれから、例のストーカーは?」

「今のところ、何もない。かな?」

悪戯電話もないし、ヘンな手紙が届くこともない。あれきり、姿を見せないストーカー。
とは言っても、油断は出来ない。

わたしの名前どころか、昔のそれもとってもコアな部分を知っているあの男。
ということは、わたしのことをかなり調べ上げたはず。

どこでどんな接点があったのか、さっぱり記憶にないけれど。
いつまたフラリと現れるか、気が気じゃない。


と、思っていたら……

< 22 / 159 >

この作品をシェア

pagetop