いつか晴れた日に
「どうして?」

「どうしてって……。普通に考えたらわかるでしょ?彼氏でもないのに……」

それに、中途半端に一緒にいて、別れる時に寂しい思いをするのはイヤだから。
これ以上、わたしの生活に立ち入って欲しくないんだよ。

「じゃ、俺のこと、彼氏にしてよ」

その言葉に驚いて顔を上げると、次の瞬間、ぐるりと視界が反転した。

声を出す間もなく、床に押し倒されてしまったのだ。

「り、涼?」

「彼氏って、何をすればいいの?キス?それとも……」


涼の顔がゆっくりと近付いて……

わたしは、ほんの一瞬だけ迷ってしまった。

唇に躊躇いがちに触れる柔らかなもの。
それが、涼の唇だと認識するまでの僅かな時間、意識は子供の頃の記憶に飛んでいた。

黒い濡れたような涼の瞳はチビタを連想させる。
甘えたようにわたしの頬を舐めるチビタはいつだって、わたしの一番大切な友達だった。

……わたしは、どうかしてる。チビタと涼を重ねるなんて。

「涼っ、止めて!!」

吐息が掛かるほどの距離で動きを止めた涼は、叱られた子供のように今にも泣き出しそうな顔をした。

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