いつか晴れた日に

地下鉄の駅の対面にあるドーナツショップで池永さんとの待合わせをしていた。

約束の時間の五分前に着いたわたしは、店内を見回して池永さんの姿を探す。
池永さんが居ないことを確認して、それから携帯をチェックする。

「……あ」

夕飯は要らないけど、涼にどうやって連絡をすればいいの?

…………。

涼に連絡する術がないと、今更気が付いてしまった。

きっと、今日もご飯作ってるよね。涼のことだから、わたしが帰ってくるまで、料理には手を付けずに、ずっと待っていそうだな。

そう思うと、なんだか申し訳ないような気がして、ドーナツでも買って帰ろうと列に並んだ時だった。


「……さん、安西さん」

「きゃ」

不意に肩を叩かれて、驚いて振り向くと真後ろに池永さんが立っていた。

「そんなに、びっくりしなくても……」

「ご、ごめんなさい」

ドーナツを選ぶのに夢中で、全然気が付かなかった。
池永さんはわたしが持っていたトレイを覗き込むと「一人で四個も食べるの?」と驚いたように目を見開いた。

「す、好きなんです。ここのドーナツが」

涼が部屋で待っているからなんて、口が裂けても言えない。
曖昧に笑って誤魔化すと、池永さんは「外で待ってるよ」とお店から出て行った。

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