Change the voice
「その台本の厚さはゲーム系か。その日は仕事のあとに予定入れんなよ?多分そのまま病院だから」

「病院?!って、そんな過酷な現場なんすか?」

「過酷も過酷。とにかく拘束時間がえらく長いし、ブースに入ったらひたすら一人でしゃべり続ける。絵が無いからリテイクも喰らうことも多いし。ま、その分もちろん稼げるけど」


言いながら、オーディション参加者募集のチラシを漁る。

芹澤先輩もまた、声優だけでは食べていけない、兼業声優のうちの一人だ。


「だからまともなマネージャーなら、ゲーム録りの後は病院抑えてる
もんだけどな。あの感じじゃどうだかな」



しかし果して病院は抑えられていた。


現場は想像以上に過酷で、自分の経験の少なさからスタッフに迷惑を掛ける場面も度々あった。

ディレクターからは「オネエの時と素に戻った時の声の落差がシナリオのイメージ通りだった」と採用の理由を聞かされたが、オネエのトーンを数時間に渡ってキープするのは、相当に喉に負担をかけたし、
逆に素の声が必要な濡れ場では、開き直りに多少の時間を要した。
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