【完】ある日、恋人を購入した。
相性と運命
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大きな鞄の中に、全ての仕事道具を入れていく。
ここは夜の会社。誰も居ないそこ。自分のデスク。
あたしはふと時計に目を遣ると、時間を確認した。
…20時近く…。
あたしは今日で、この会社を辞める。
尚叶くんとのことがあって、もう決めたんだ。
新しい場所で、新しくやり直すって。
確かに寂しい気持ちはあるけど、もう迷いはないから。
そして、思い返した。
この前シュウさんから言われたことを。
“俺のところに来ればいいよ”
“!”
“もう尚叶とは逢いたくないだろ?だったら、逢わないように俺のところにいればいい”
今のマンションじゃ、どうしても逢うことになりそうだから。
シュウさんはそう言って、傷ついたあたしの心を今も支えてくれている…。