Ri.Night Ⅲ
「分かったから先にリビング行っててよ!」
「……優音くん、凛音ちゃんが冷たい……」
シッシッと手で追い払いながらながらそう言ったあたしに、しょぼんと肩を落としてその場に蹲る貴兄。
ご丁寧に背を向けてフローリングに“の”の字まで書いてる所がなんか女々しい。
「貴兄、俺腹減ったんだけど。早く飯食おうぜ。今日の卵焼きのトッピングなに?」
「……卵焼き?今日は優音の好きな紅生姜とネギだけど……」
「やった。俺、貴兄の卵焼き好き。腹減ったから早く食いてー」
「……よし。兄ちゃん作ってくる」
「行ってら~」
キランと目を輝かせた貴兄に、ヒラヒラと手を振る策士家優音くん。
すっかり機嫌が良くなった貴兄は鼻歌を歌いながら部屋を出ていった。
「……さすが優音くん」
「フッ。感謝しろよ、凛音チャン」
「アリガトウゴザイマス」
「ムカツク」
「ちょー!!謝ります!ちゃんと謝るからー!」
またしても新技をかけようとする優音にソッコー白旗を挙げて、手の届かない所に逃げる。
「次余計な事言ったらは新技part2かけるからな」
「し、新技part2?」
何だ、そのpart2って。こわいんですけど。
「じゃあ、先行ってるから早く来いよ」
「了解デス」
「あ、今日のなまこの味噌汁だって」
「なまこのお味噌汁?」
なまこってあの見た目気持ち悪いやつ?
え、あれってお味噌汁に入れるものなの?
うげっと顔をしかめたあたしに、同じく顔を引き攣らせる優音。
「……早く来いよ」
「ラジャ」
微妙な空気の中出て行った優音を見送って、ぼすんっとベッドにうつ伏せに倒れた。