Ri.Night Ⅲ

「凛音……」


……分かってる。


このままの状態で別れるなんて、そんな事出来ないって分かってる。


あたしだって別れる時ぐらい十夜の顔が見たい。


でも。


十夜の顔を見れば離れたくないと思ってしまう。


想いが溢れて止まらなくなる。



もう、どうしたらいいのか分からない。


分かんないよ……。


そう、心の中で呟いた時、十夜の右手が戸惑う心に拍車をかけるかの様にあたしの右手にそっと触れた。


触れた瞬間、まるで電流が走ったような感覚があたしを襲って。


絡み合うその手から目が離せない。


だって、この仕種はまるで“あの時”みたいで……。



「直ぐだ」


「え?」


脈絡のない言葉に自然と顔が上がる。


それと同時に深く絡まる指。

骨ばった指があたしの指を絡め取り、熱を伝える。


心臓が痛いぐらい激しく動き出して、握られた手が小刻みに震えた。



「直ぐに迎えに行く」


「……っ」


「だから、そんな顔すんな」


「十夜……」


十夜の手がまるであたしの震えを止めるかの様にグッと強く握り締める。

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