最悪な出会いから
某大安吉日
 異星人と生涯一緒に生きる決意をした勇気有る友人のお陰で、結婚のご祝儀……。トータルでいくらお出ししたのか? 計算出来ないくらいお祝いして来た。回収の見込みは全く無い……。今のところ? 生涯ないのかも……。

 そして十月某大安吉日。私はホテルの披露宴会場に居た。

 御芳名帳に名前を記入しピンクの熨斗袋のお祝いを預ける。受付をしているのは美耶子の会社の後輩なのか、たぶん二十代のお嬢さん。

 受付から少し離れて留袖を着た美耶子のお母様がいらした。招待客に挨拶しているようだ。私を見付けて笑顔で近付いて来てくれた。

「未緒さん、お久しぶりね。元気だった?」

「はい。お陰さまで。おばさまもお元気そうで」

「やっと美耶子が片付いてくれて一安心よ。未緒さんは、そろそろかしら?」

「いいえ。まだまだ当分は一人の予定ですから」

「まぁ、勿体無い。未緒さん綺麗なのに。お仕事お忙しいのかしら」

「はい。お陰さまで忙しくしております。あの美耶子に会えますか?」

「会ってやって。控え室に居るから」

 教えて貰った控え室のドアをノックする。

「はい。どうぞ」

 美耶子の声。ドアを開けると……。そこはまるで異空間。
 小さな星たちが煌いて踊りながら祝福しているように見える。純白のウェディングドレスとベールを纏った美耶子は眩しいほど輝いて美しい。

「おめでとう、美耶子。すごく綺麗よ」
 本当に心から思った。

「未緒、ありがとう。来てくれて」
 笑顔までいつもより柔らかく上品な貴婦人のよう。

「もう誰か来たの? 瞳たちは?」

「まだじゃないかしら。ここには顔を出してくれてないから」 

「そうなの。じゃあ後でね」

 小さく手を振って控え室を後にした。


 そういえば年配の方が多いような気もするかな。瞳たちは、まだ来ていないのかしら。知った顔を探しながらロビーに居た。

 きょうはシャンパンオレンジのミディ丈のドレスにサテンのハイヒール。肩より少し長い髪はゆるいウェーブをかけて。メイクも念入りに。香りも普段より少しゴージャスな物にした。でも落ち着かない……。

 仕事の時は黒やグレーのパンツスーツ。スカートなんて穿いていられない。足元もヒールのあるスニーカーか場所によってはミドルヒールのパンプス。髪も纏めている。いつでも現場に行けるように。やっぱり女を捨てているように見えるのかな? 仕事の時は……。

 男に生まれてくれば良かったと何度も思ったけれど。でも女性だからこその感性が活かせる仕事もある。そう信じて続けて来た。この先も仕事は続けるつもりだ。

 結婚は正直まだ考えてはいない。大学時代、付き合った人は居た。でも結婚を意識してはいなかった。

 今の会社に入ってからは仕事を覚えるだけで必死だったから恋愛なんてしてる時間はなかった。

 出会いは、もしかしたらあったかもしれなかったけれど気付かなかった。


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