せめて夜が明けるまで

付き合って半年の記念日。

私と朝日はドライブで夜の海に行った。

「わあ…綺麗」

「都会ではこんな綺麗な星空見れないからな。来て良かったな」

10月の海はさすがに肌寒い。
果てしなく続く夜の海は、暗くとても怖い。

でも隣に朝日がいるんだと思ったら、全然怖くなくなった。


「寒くないか?」

「大丈夫だよ」

「ちょっと座ろうか」

「うん」

波が押し寄せたり引いたりする音だけ辺りに響いた。

都会の車の音や、ガヤガヤした人の声は一切聞こえない。

居るのは私と朝日だけ。
貸切状態だった。


朝日と居るときの、この静かな沈黙も私は好きだった。

他の人ならば苦痛に感じる沈黙も、朝日となら苦痛だなんて思ったことなんてなかった。

右隣には夜の海を真っ直ぐ見つめる朝日。
髪が風になびいて少しぼさついている。

少し茶色がかったさらさらの髪。
左目の下にあるほくろ。
丸まった猫背の大きな背中。

いま夜の海を真っ直ぐ見つめる、切なそうな綺麗な瞳。


朝日の全部が好きだった。
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