そこにアルのに見えないモノ
決心

「…はぁ、ごめんなさい、総一郎さん。今日は少し残務があって遅れました」

「ああ、大丈夫だよ」

いつものようにくわえ煙草の煙にしかめ面。遅れると連絡は入れておいた。
さっきまで色味のある事務服を着ていたのに、また似たような格好に着替える。
いつもの事だが、モノトーン色になるだけでしっくりくるから、場の雰囲気とは不思議なものだ。

「カオルちゃ〜ん、着替え終わったらちょっといい?」

俺は奥の部屋で着替えているカオルちゃんに声を掛けた。

「は〜い、すぐ行きます」

何だろう…珍しいな。カクテルの作り方とか?…それはないか…。


「総一郎さん、何でしょう?」

袖口のボタンを掛けながら声を掛けた。

「うん、実はね、…これなんだけど…」

俺はポケットから名刺を出し、カオルちゃんに見せた。

「昼間、この人が訪ねて来た」

私は名刺を受け取りながら話した。

「…これは、その方のですよね」

黒崎…。

「ああ…」

「これ、ここには黒崎って…黒崎って、どういうことなんでしょう…」

「…さぁな、ま、名刺の男は、黒崎という人物だという事だ」

「でも…、そんな、今更…何…」
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