そこにアルのに見えないモノ
おまけ

−策士、総一郎−


「総一郎さん、今までお世話になりました。
有り難うございました」

「俺は何もしていない」

「いいえ、五年前、私の話を聞いてくれて、Baronに来るかって言ってくれました。
雇ってもらっていなければ、私はどうなっていたか解りません。
感謝しています。
本当に有り難うございました」

「終わったのか?」

「はい。今月で」

「そうか」

「はい、総一郎さん。
終わりました!」

私は総一郎さんに思いっきり抱きついた。

「おっとっ。危ない」

「ごめんなさい。ホッとして嬉しくて…思わず」

「大丈夫だ。…頑張ったな、晶」

私を抱いたまま、頭を撫でてくれた。

「お母さんが、最近ポツリポツリですが、話をするようになってきたんです。
借金が終わった事がきっかけになったのかも知れません」

「そうだな。お母さん、自分を思えば複雑かも知れないが、お母さんなりに、娘が頑張ってるのはよく解ってた筈だからな。
晶がそれから解放されたんだから、安堵したんじゃないのか?

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