Lunar Eclipse

「ただいま」

私がドアを閉めないうちに、

奥のLDKから

お母さんが飛び出してくる。

「美月、無事だったのね。

 お母さん、心配してたのよ」

そう言いながら私を抱きしめる。

それから私の顔を見るような、

でもそれを通り過ぎて

遠くを見ているような目で、

じっとみつめる。

「あら、肌が乾燥してるんじゃない?

 もう冬ねぇ」

そう言いながら後ろを向き、

リビングに戻っていく。

「...。冬じゃないよ。もう春だよ」

私が言うとお母さんは

ちょっと振り返ってふっと笑った。

「何言ってるの。

 棚の上にクリームあるから、

 後で塗っておきなさい」

そのままリビングに戻っていくお母さん。

もう冬は終わったんだよ..、お母さん。

それに私の肌の状態なんて

お母さんに分かるわけないいよ。

マスクと前髪で、とても肌が見えるような

状況じゃないんだもん。

私ははぁ、とため息をついて部屋に入る。

早く前の様に戻ってよ、お母さん。

< 19 / 36 >

この作品をシェア

pagetop