メリー＊メリー
「いい匂いがしたので」

レイは扉を開けて僕の隣に来た。

「美味しそうです…」

レイは食い入るように焼きあがって湯気の立ち上るそれを見ていた。

その姿がまるで年下のいとこのように思えて愛らしくて、ふっと思わず笑みがこぼれる。

「じゃあそれ持っていってくれる？」

はい、とレイは元気よくトーストの乗った皿を両手で持って行った。


「さあ、食べようか」

今日の朝ごはんはトースト・ベーコン目玉焼き乗せ。

たいした料理じゃないけど、朝から元気が出る、簡単お手軽美味しい朝ごはん。

野菜ジュースのペットボトルとコップを２つ持ってきて、レイの正面に座る。

「せーの、いただきます」

2人とも合掌して軽くお辞儀する。

せーの、なんて言葉を合わせることもなかったから、なんとも不思議な気分だ。

「美味しいです！」

レイが頬張りながら僕に言う。

「ほとんど手抜きみたいなもんだけどね」

僕は苦笑した。

レイはこんな手抜き料理だって褒めてくれるから優しい。

「でも本当に美味しいです！」

レイは黙々とトーストを食べた。

「喉に詰まらせないようにね」

ここにジュース置いておくから、と声をかけると、

「ありがとうございます！」

朝日に負けないくらいの眩しい笑顔で答えてくれた。

つられて僕も笑顔になる。


突然始まったこの2人暮らしは、心地よいやさしさに溢れていて。

ひとりで暮らしてきた僕が慣れるのにはまだ、時間がかかりそうだ。
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