メリー*メリー
きらり、きらり
「ただいま」

家に帰ると「おかえりなさい」とレイが出迎えてくれた。

たったそれだけのことで僕はひどく驚いて、安心してしまう。

この家で僕以外の声が返ってくることには慣れないな、と未だに思う。

「あの、椎に聞きたいことがあるんですけど」

レイはいつになく深刻そうな顔でそう話を切り出した。

「何?どうしたの?」

コートをハンガーにかけながら、僕は尋ねた。

するとレイは広告のチラシを持ってきた。

「広告?どうしたの、それ」

「郵便受けに入っていました!」

そしてレイはその広告を見ながら何かを探し出すと指さした。

「これ、何ですか!?」

レイが指さしたのは、大きなクリスマスツリーの写真。

おそらく駅前のクリスマスツリーだろう。

駅になる大きな木は毎年イルミネーションでライトアップされるから。

「クリスマスツリーだよ」

するとレイは案の定首を傾げた。

「クリスマスって何ですか?」

あぁ、そうか、レイに説明するには、そこから説明をしなければならないのか。

そうだな、と僕は考え込むようなポーズをしながら答える。

「クリスマスはイエス・キリストの誕生日で、それを祝う日だよ。大きな木や家を飾りつけたり、プレゼントを贈りあったりする、楽しい日になってるけどね」

するとレイは「木を飾りつけるんですか!」と心底驚いたような顔をした。

「でも、楽しいなら気になります」

レイはクリスマスツリーの写真を見ながらうっとりとした表情を浮かべている。

「じゃあ、見に行く?」

そんな表情を見ていると、ついついそんなことを口にしてしまった。

レイは驚いたように僕の方を見る。

「え、でも…」

レイは僕と広告を交互に見ながら戸惑っているような声を出す。

「その日、予定はないんだ。レイが気になるのなら一緒に行ってもいいよ」

人が多いかもしれないけど、と付け加えた。

するとレイは「ほ、本当にいいんですか?」と念を押すようなことを言った。

「もちろん」

僕が少し笑って言うと、レイはぱぁっと明るい顔をして、「行きたいです」と言った。

そして愛おしそうに広告のクリスマスツリーを見つめていた。

僕はその姿をみて思わず頬が緩んだ。

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