恋する歌舞伎
ここは伊豆の修禅寺村にある面作師(おもてつくりし)・夜叉王(やしゃおう)の家。

妻は亡くなり、忘れ形見の姉妹が父の仕事を手伝い暮らしている。

姉妹といえども性格は真逆で、姉の桂(かつら)は上昇志向が高く、いつかは高貴な人に奉公をして、優雅な日々を送ることを夢見ている。

反対に妹の楓(かえで)は現実主義で、父の弟子の春彦と結婚し、父親に似て職人気質なところがある。

ある日この家へ、源頼家(よりいえ)が家臣を連れて訪ねてくる。

高貴な身分の頼家が人里離れた村に自らやってきた理由は、

半年前、夜叉王に「自分の顔に似せた面をつくれ」と命じたが、何度催促しても未だ出来上がってこないからだ。

完成しない理由を尋ねると、
「昼夜となく必死に面を打っているが、納得できる面が出来上がらず、作っては壊しを繰り返している」
と答える。

埒が明かないので、家臣が完成の期日を迫ると、
「面というのは技術だけでは完成せず、自然と力が湧き出るまでひたすら待つしかないものなので、期日は決められない」
と言う。

それを聞いた頼家はもともと短気な性格もあり、遂には夜叉王に向かい刀を抜こうとする!

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