恋する歌舞伎
六助は独身であるが、「弥三松(やそまつ)」という幼い子どもと暮らしている。

この男の子は、ある日見知らぬ老人を助けたとき、その死に際に託された子なのだ。

六助は不器用ながらも懸命に子育てをし、ここで匿っていると身寄りの人が気づけるよう、弥三松の着物を門口に掛けて暮らしている。

ある日、その着物に気づいた怪しげな虚無僧が、六助に向かって
「家来の敵!」
と言いながら斬りかかってくる。

虚無僧が偽物だと見破っていた六助は余裕の体でかわし、更には女性であると悟る。

この不審人物の正体、実は弥三松の叔母であったのだ。

素性がわかり安心した六助は、彼女にこれまでの経緯を一部始終説明する。

それを聞いた女はこれまでと態度を一変、急にしおらしくなり
「私はあなたの女房です」
と申し出る。

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