恋する歌舞伎
すべてを聞いていた保名は、「たとえ狐でも君がいいんだ」と駆け寄るが、狐・葛の葉は忽然と消えてしまう。保名は童子を背中におぶり障子の歌を頼りに信田の森へと急ぐのだった。


人をだます、たぶらかすといった意味で「女狐」という表現が使われることがしばしばある。

だがこの歌舞伎に出てくるのは、恩返しのため人間に化けたが恋心が芽生え、健気に6年間人間として生活をしていたという心の清い狐。

その夫婦・親子の情愛は種族の壁を越え今も「葛の葉伝説」として語り継がれている。



ちなみに人間と狐が出会い恋に落ち生まれた子供、安倍童子(あべのどうじ)は非常に賢く育ち、また母の力を受け継いでか不思議な力を持つ。

それが後の「安倍晴明」だと伝えられることも、この不思議な物語のエッセンスとなっている。






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