恋する歌舞伎
「翼が欲しい。飛んで行きたい」と嘆く姫の前に現れたのは一匹の狐。

狐いわく今の姫なら、凍った湖面の上を渡っていけるというのだ。

それにしても、なぜ狐が力を貸してくれるのか。

そもそも両家の不和の原因は、武田家の大事なお宝である兜(かぶと)を、長尾が武田から借りたまま返さないことだった。

その兜には、諏訪明神の使いである“狐”の霊が宿っており、戦場でものすごい力を発揮したのだ。

勝頼に届けようと携えていた兜によって、狐の通力を得た八重垣姫。

愛する夫を助けるためと、先を急ぐのだった。

愛の力は時に人間の常識を超え、想像し得ないような底力を発揮させるのだろうか。

おっとりとして世間知らず、なのに恋愛のことになると超積極的でとんでもない行動力を発揮するというギャップが、歌舞伎に登場する代表的なお姫様の特徴であり、魅力なのかもしれない。

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