恋する歌舞伎
ここで登場するのがこのお話の主人公、又平(またへい)・おとく夫婦。

又平は腕の立つ絵師なのだが、生まれつき吃音(きつおん)で、うまく喋ることができない。

それをしゃべりの得意な妻のおとくがフォローしながら、今は大津絵(※)を売り貧しいながら夫婦二人三脚で暮らしている。

そんな夫婦は今日も師匠に挨拶にやってきたのだが、将監の妻から「弟弟子の修理之助が功績を上げ、土佐の苗字を許された」と聞かされる。

呆然とする夫婦。

夫婦は又平にも土佐の苗字を許してもらえるよう頼むが、「絵の道で手柄を立てねば無理だ」と一蹴されてしまう。

又平は、自分のどもりが出世の足かせになっていると己の運命を呪うのだった。

そこへ突然、手負いの武士がやってくる。

なんでも将監の主人筋の姫君が誘拐されたというのだ。

使者を送って助け出さねばというところへ、名乗りを上げたのが又平だった。

※東海道の宿場町で、旅人が買い求めるお土産用の絵

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